不正アクセスの被害に遭った場合、自分だけで原因を調べたり、システムを復旧させたりするのは難しいことがあります。
特に、企業の顧客情報や従業員の個人情報が漏えいした可能性がある場合は、専門機関の支援を受けることが重要です。
ここでは、不正アクセスに関する相談窓口や支援制度、被害の実態を解明する方法について解説します。
不正アクセスの被害を相談できる窓口と支援制度
不正アクセスの被害について相談できる主な窓口として、警察と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)があります。
警察は、不正アクセスなどのサイバー犯罪に関する通報や相談を受け付けています。被害に遭った場合は、最寄りの警察署や都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口に相談できます。
また、警察庁では、サイバー事案に関する通報・相談・情報提供をオンラインで受け付ける窓口も案内しています。
一方、IPAは情報セキュリティに関する技術的な相談や、企業・組織のインシデント対応に関する支援を行っています。
特に注目したいのが、2026年10月16日に開設された「不正アクセス特別相談窓口」です。
これは、不正アクセスによる情報漏えいの被害を受けている、またはその可能性がある全国の企業・組織を対象に、初動対応を支援する窓口です。
中小企業も相談対象に含まれています。
主な支援内容は、次のとおりです。
- 発生している事象を確認し、被害の可能性について助言する
- 被害が発生している場合、応急処置について助言する
- インシデント対応を行う専門業者を紹介する
- 必要に応じて、ほかの相談先や報告先を案内する
電話での相談受付時間は、平日の9時30分から17時30分までです。ただし、12時から13時までは受け付けていません。
企業や組織で不正アクセスが疑われる場合は、被害の有無が確定していなくても、相談を検討するとよいでしょう。
なお、これらの窓口は相談や初動対応の支援を行うものであり、すべての被害について調査や復旧を代行するものではありません。
また、相談窓口の設置と、調査費用などの金銭的な補助制度は別です。費用の支援を希望する場合は、対象となる制度や利用条件を個別に確認する必要があります。
参考:IPA「不正アクセス特別相談窓口」、警察庁「サイバー事案に関する相談窓口」
不正アクセスの原因や侵入経路を特定する方法
不正アクセスの実態解明では、どこから侵入されたのか、どの情報が閲覧・取得されたのか、被害がどこまで広がっているのかを調べます。
調査に使われる主な情報は、サーバーのアクセスログ、認証履歴、ネットワーク通信の記録、セキュリティ製品の検知情報などです。
例えば、通常とは異なる国や地域からログインが行われていた場合、不正アクセスを疑う手掛かりになります。
また、短時間に大量のアクセスが発生していたり、普段は利用されない管理者アカウントが使用されていたりする場合も、詳しい調査が必要です。
ただし、ログイン履歴に不審な記録があるからといって、それだけで攻撃者を特定できるわけではありません。
攻撃者が第三者の端末や侵害されたサーバーを経由している可能性もあるためです。
企業では、専門家の協力を得ながら、次のような点を確認します。
- 不正アクセスが発生した日時と侵入経路
- 不正に利用されたアカウントやシステム
- 閲覧・取得された可能性のある情報
- 不正アクセスによって変更・削除されたデータ
- 同じ侵入経路を利用した再攻撃の可能性
調査にあたっては、証拠となるログやデータを適切に保存することが重要です。
慌ててログを削除したり、システムを初期化したりすると、原因の特定に必要な情報が失われる場合があります。
一方で、被害の拡大を防ぐために、通信の遮断やアカウントの停止などを急ぐ必要があるケースもあります。
そのため、証拠の保全と被害拡大の防止を両立できるよう、専門家に相談しながら対応することが望ましいでしょう。
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能動的サイバー防御とは?不正アクセス対策への影響
不正アクセスやサイバー攻撃への対策は、個人や企業がそれぞれのシステムを守るだけでなく、国全体で脅威を把握し、被害を防ぐ取り組みへと広がっています。
その一つが、政府が進める「能動的サイバー防御」です。
2025年5月に関連法が成立し、2026年10月1日には、官民連携の強化やアクセス・無害化措置に関する規定が施行されました。これにより、重大なサイバー攻撃への対応能力を強化するための制度整備が進められています。
能動的サイバー防御の仕組みと期待される効果
能動的サイバー防御とは、重大なサイバー攻撃による被害を未然に防ぎ、被害の拡大を抑えるため、攻撃の兆候を把握し、必要な対処を行う取り組みです。
従来の対策では、ファイアウォールやウイルス対策ソフトなどを使って攻撃を防いだり、被害が発生した後に原因を調査したりすることが中心でした。
これに対し、能動的サイバー防御では、政府による通信情報の分析や官民での情報共有などを通じて、攻撃の兆候を把握し、重大な被害を防ぐことを目指します。
また、法律に基づき、一定の条件の下で、警察や自衛隊が攻撃に使われているサーバーなどにアクセスし、無害化措置を実施できる仕組みも整備されました。
こうした取り組みには、国や重要インフラを狙ったサイバー攻撃による被害を抑え、社会全体の安全性を高める効果が期待されています。
一方で、能動的サイバー防御が導入されたからといって、個人のアカウントや企業のシステムへの不正アクセスがすべて防げるわけではありません。
個人や企業には、引き続き、パスワード管理や多要素認証、ソフトウェアの更新、アクセス権限の管理といった基本的な対策が求められます。
また、通信情報の利用や無害化措置については、法律に基づく適切な運用や、通信の秘密などの権利への配慮も重要です。
能動的サイバー防御は、個々のセキュリティ対策に代わるものではなく、国全体の対応能力を強化する取り組みとして理解する必要があります。
参考:内閣官房「サイバー安全保障に関する取組」、防衛省「令和8年版防衛白書・サイバー安全保障」
まとめ|不正アクセスの被害を防ぐためにできること
不正アクセスの被害を防ぐには、日頃からのセキュリティ対策に加え、被害に気づいたときの迅速な対応が重要です。
個人の場合は、パスワードの変更や多要素認証の設定、不審なログイン履歴の確認などを行い、必要に応じてサービスの運営会社や警察に相談しましょう。
企業の場合は、アクセスログなどの証拠を保全しながら被害の範囲を確認し、専門家の支援を受けて原因の調査やシステムの復旧を進めることが大切です。
IPAの不正アクセス特別相談窓口も、初動対応について相談できる選択肢の一つです。
また、国が進める能動的サイバー防御によって、重大なサイバー攻撃に対する情報共有や対処能力の強化が進んでいます。
ただし、すべての不正アクセスを防げるわけではないため、個人や企業による対策も引き続き欠かせません。
不正アクセスの疑いがある場合は、被害を放置せず、早めに適切な相談先へ連絡することが、被害の拡大防止と実態解明につながります。
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